大人が気をつけてあげたい”都合のよい子ども”

小学校1年生のAちゃんのお母さんからのお悩みです。

Aちゃんはクラスでも活発な女の子で、毎日楽しく学校に通っていました。

ところがあるころから、クラスのお友達から「あっちに行って!」「きつい言い方はやめて!」と言われたと、元気なく帰ってくる日が増えてきました。

お母さんは「小学校1年生のことだから多少の言い合いはありがち」と、気をもみながらも様子を見ることにしました。

そうした日々をすごしていたある日、担任の先生からお母さんに電話がかかってきました。

担任の先生は・・・

「Aちゃんはとてもよくお手伝いをしてくれて助かっているんです。
今日はB君がAちゃんのことを”あっちに行って”と強く言ったらしく、Aちゃんが泣いてしまいました。
Aちゃんは何も悪いことはしていなくて、授業の後片付けができていないB君のことを注意してくれていただけなんです。

two books beside two chalks

B君はなかなか私の言うことを聞いてくれないんですが、Aちゃんのいうことは聞いてくれるので、本当に助かっているんです。
B君には、そんな言い方をしてはダメよ、と伝えていますしこれからは気をつけて見ておきますね・・・」

先生からの言葉を聞いたお母さんは複雑な気持ちになりました。

親やクラスの先生の困っている様子を察して、”私が助けてあげなきゃ”とがんばってしまう子ども。

ほほえましい姿ですね。

大人の真似をしてみたい気持ちは「学ぶ=真似ぶ」とも言われるように大切です。

また誰かを助けてあげられる自分を周囲に認めてもらうことは、自己肯定感を育てる上でも大切な機会です。

なぜお母さんは複雑な気持ちになったのでしょうか?




お母さんからの前後の詳細の話は割愛しますが、どうやら先生は、本来であればご自身がB君の成長のために教員として指導しなければならないところを、Aちゃんを自分の代わりに・・・言葉は悪いですが・・・便利に使ってしまっているように思えます。

たしかにAちゃんは言うことを聞いてくれる素直なかわいらしい子どもかもしれません。

しかしそれは先生にとってのAちゃんの姿。

クラスメイトやB君から見たAちゃんの姿はどうでしょうか?

先生の言うことをよく聞くいい子、に映るでしょうか?

おそらく違いますよね。

Aちゃんは、B君やほかの同じ年齢の子どもたちと失敗をしながらも上手にコミュニケーションをとる方法を学び、仲間関係を作っていくために学校に行っているのです。

もちろんB君も同じです。

Aちゃんから注意されたB君は、本来であれば先生が指導するような内容をクラスメイトにされてしまい、自分のプライドが傷ついたに違いなく、それがAちゃんへの反発として表現されてしまったようです。

group of children playing on green grass

Aちゃん、B君は小学校1年生。

先生からの期待を感じること、しっかり自分のプライドがあること、それぞれに一人の人間としてしっかり成長しています。

ただ、もう少し高学年になると、「先生の都合のいいように動く”いい子”」は、いじめの対象になることもあります。

大人は目の前の子どもに、その幸せな将来を見ながら接したいものです。


お母さんは先生に、”Aちゃんがいい子と思ってもらえることはありがたいものの、先生の代わりをしてB君に接することは望まない”と伝えました。

先生はAちゃんに自分の代わりをさせているつもりは無かったので、学校でAちゃんに「なぜB君のことを注意するのか」と聞いてみました。

するとAちゃんは

「先生を助けたいから」

と答えました。

先生はその答えに気がつきました。


その後、Aちゃんは元気をとりもどした様子にお母さんもほっと一安心されました。


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