借りパクしないで返してよ 発達障害の子どもの支援
発達障害の支援クラスに来ている教室にペンケースを忘れてしまった小学生低学年の男の子。
その翌週、忘れずに渡そうと、そのペンケースを教室に持っていきました。
すると、ニコニコしながらその男の子がやってきて開口一番、
「借りパクしないで返してよ」
と言ってきました。
借りパク、というのは、他人のものを借りて、その後返却せずにそのまま自分のものにしてしまう、という意味です。
「借りパクしないで」とは、言われた側にとっては強い言葉ですね。
盗った、と言われているわけですから。
同年代で「借りパク」の意味を知っていれば、クラスメイトからいきなりこういうことを言われると驚くでしょう。
大人でも、子どもが発した言葉であっても、「えっ?」と思う言葉です。
しかも、今回のような状況では、ペンケースは返そうと思って持っているだけで、借りてもいないわけです。
人間関係ができあがっている間柄では、あくまでも「冗談」としてこういう言葉を言い合う場面場合はありますね。
しかし、今回の彼はニコニコしているものの、「冗談」で言ったとは思っていないようです。
かといって、相手が本当に自分のペンケースを「借りパク」をしている、とも思ってはいない様子。
この言葉が出るまでに彼は・・・
・・・自分のペンケース、こないだ忘れたんだよな。みつかるといいな。あ、先生が持ってる!ボクのだ!やっぱり前に忘れてたんだ。よかった!先生、早くボクのペンケース返してよ!
という風にきっと順を追って考えているはずなのですね。
ところが、思いをぜーんぶすっ飛ばして、最後の「先生、早く返してよ」と結論を言ってしまう・・・。
これって頭の回転が早いのだと私は思います。
ただ、言葉のチョイスをちょっと失敗してしまっているので、その言葉だけを聞いてしまうと、「わかっていない子」や「空気が読めない子」「相手の気持ちがわからない子」と見られてしまうのです。
こういう会話に出くわしたときはチャンス!
借りパクがどういう意味を持つ言葉なのか、言われた相手はどう思うものなのか、そもそもどんな気持ちをたどってこの言葉が出てきたのか・・・?
「今、言ってくれた言葉なんだけどね・・・」と話しを進めていくと、最初は「なに?」と怪訝な表情をしていた彼は「わかった!」と言ってペンケースを持っていきました。
・・・小学校のクラスの中でこういう場面があったとしても、担任の先生は大勢の子どもたちを相手にしていますから、なかなかその瞬間をつかまえて個別にじっくり話しをする、ということは難しいかもしれません。
また、家でもなかなかこういった発言をつかまえることは難しいものです。
想定外の出来事が起き、想定外の発言を引き出せる状況は、第三者が関わったほうが作りやすいからです。
子どもたちの小さな発言から、繰り返し繰り返し状況を巻き戻して一緒に考えていきます。
目の前の子どもたちが、小学校、中学校・・・大人になったときに周囲と共に楽しく自分らしく過ごすことができるために・・・。